上野の森バレエホリデイが〈バレエホリデイ@home〉としてオンライン企画になったことをうけ、牧阿佐美バレヱ団も舞台映像配信に参加させていただくことになりました。
バレエ団の枠を超えた試み、とてもわくわくしますね!
無料の舞台映像配信は、いずれも貴重なラインナップ。牧阿佐美バレヱ団は「飛鳥 ASUKA」をダイジェスト映像でお届けいたします。
「飛鳥 ASUKA」は、直近は昨年、2019年1月ロシアのウラジオストクにあるマリインスキー劇場プリモルスキー分館にて公演を行った作品です。
日本のバレエを求めて、橘秋子から牧阿佐美に受け継がれた本作は、日本を代表する洋画家、絹谷幸二氏が「飛鳥 ASUKA」のために描いた竜と、絹谷氏の絵画作品を映像化した美術演出によって、いにしえの都とファンタジーの世界が繋がる、壮大な物語となっています。
せっかくなので「飛鳥 ASUKA」について、作品のポイントをまとめてみましたよ!
【1】背景がガンガン動く!映像技術を駆使した演出
幕が上がり、まず登場するのが日本を代表する洋画家、絹谷幸二氏が「飛鳥 ASUKA」のために描いたカラフルな竜!
この竜が悠々と宙を舞い、飛鳥時代の日本を舞台にした世界に切り替わります。
と、ここまでの一連の流れ、バレエの舞台でどのように表現されるか?想像できますか?
実は2016年に「飛鳥 ASUKA」として新制作し上演するまでは、"ガンガン動く背景"がダンサーの動きを邪魔するのではないか?懸念がなかったわけではありません。しかしながら、上演後そういった違和感は語られませんでした。昨年ウラジオストクで上演した際もこの「映像とバレエの融合」が高く評価されました。
牧阿佐美はこの点について、当初は危惧していいたものの「舞台に宇宙的な広がりがあった」と答えています。
毎日新聞夕刊記事(2018年6月12日付)
【2】豪華なゲストダンサー
今回のダイジェスト版は、2016年の初演より。(新国立劇場オペラパレス)
主役の「春日野すがるおとめ」をスヴェトラーナ・ルンキナ(カナダ国立バレエ団 プリンシパル)、「岩足(いわたり)」をルスラン・スクヴォルツォフ(ボリショイバレエ団 プリンシパル)が演じたことでも話題になりました。
ルンキナは2018年再演時にも来日、次のようにメッセージを送ってくれました。
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この作品は、日本文化の精神と美をバレエ化したものと受けとめております。日本の伝説をモチーフにしたこのバレエには、激しく魂を揺さぶられました。 『飛鳥』には様々な色彩とニュアンスが込められており、それについては稽古を重ねる中で、牧阿佐美先生から懇切丁寧にご説明していただきました。 それはとても刺激的でユニークなプロセスでした。私はどんな些細なニュアンスもおろそかにしないよう努めたつもりです。牧先生が『飛鳥』で振り付けた動きの一つ一つが、表情豊かで深い意味を持っていたからです。
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日本人が作った日本を舞台にした作品の主役を外国人のダンサーが踊ることについては、色んな感想を持たれるかも知れません。
しかしながら、牧先生にとってはわりと自然なことのようです。なぜなら、世界で通用するバレエ作品となることを考えて作っているから、世界中のダンサーが踊れるのだそう。
2017年に富山オーバード・ホールで再演した際は、「春日野すがる乙女」役でニーナ・アナニアシヴィリを招聘しました。
ちなみに、昨年ウラジオストクで上演した際は主役は日本人キャストでした(日本人キャストでまた観たい、と思う事務局担当です)。
春日野すがるおとめ
スヴェトラーナ・ルンキナ
(カナダ国立バレエ団 プリンシパル)
岩 足(いわたり)
ルスラン・スクヴォルツォフ
(ボリショイバレエ団 プリンシパル)
【3】オリジナル「飛鳥物語」の初演はなんと63年前!進化した作品
2016年に新国立劇場オペラパレスで上演したのは「新制作」版です。牧阿佐美バレヱ団創立60周年記念に改訂されました。
実はオリジナル「飛鳥物語」の初演は1957年、なんと63年も前に作られた作品なんです!!
牧先生のお母さん、橘秋子先生は「日本の全幕バレエを作らなければならない」という強い思いを持っていました。
日本のバレエが始まって間もない頃から、はるか先の未来に、日本にバレエが根付いてたくさんの愛好家がいる今の世の中を見据えていたのかも知れません。
当時は雅楽によって上演された、というのでかなり衝撃作だったのではないでしょうか。。
その後改訂を重ね、大原永子さん、森下洋子さん、川口ゆり子さんなど日本を代表するダンサーが踊り継いできました。
橘秋子先生がこの作品を作られたときから「日本のバレエとは何か?」をずっと考え続けて、そのバトンが牧先生に渡された、そんな作品です。
「日本のバレエとは何か?」
これは、日本でバレエに携わるみんなが問いかける疑問かも知れません。ご存知の通り、バレエは「イタリアで生まれ、フランスで育ち、ロシアで花開いた」と言われる芸術。日本に伝わりおよそ1世紀の間に、私たちは「日本のバレエ」について自問し試行錯誤を繰り返してきました。その問いに対する一つの答えが「飛鳥 ASUKA」ではないでしょうか。
牧先生は2016年の改訂版を作る際に、それまでの「飛鳥物語」を「飛鳥 ASUKA」として名前を変えました。
英字表記を添えることで「日本のバレエ」に、より普遍性を求め試行錯誤を繰り返し進化させるという意図のように思われます。
いかがでしたか?
「飛鳥 ASUKA」はあまり上演機会の多くない作品。この機会に制作背景も含めて、皆さまにご覧いただけたらとても嬉しく思います。
最後に、新型コロナウイルス拡大による自粛要請を受けて、たくさんのバレエ公演がキャンセルされています。その他の舞台芸術と同じく、バレエ芸術が衰退の危機にあると感じています。日本に伝わり1世紀かけて培われてきたバレエ芸術は、世界に通用するレベルに成長しました。音楽などと同じ「言語によらない、世界で共通の芸術」だからこそ、世界の人に伝えることができる。昨年ウラジオストク公演で「飛鳥 ASUKA」を上演した際に、改めて自信を深めることができたことです。
この危機を乗り越えていくためにも、お一人でも多くの方にバレエに興味を持っていただけたらこの上なく嬉しいことだと思います。
それでは、どうぞご覧ください!
牧阿佐美バレヱ団「飛鳥 ASUKA」 ダイジェスト映像
配信の詳細は、上野の森〈バレエホリデイ@home〉のWEBサイトからご覧ください。
https://balletholiday.com/2020/info/
牧阿佐美バレヱ団プリンシパルの活躍もお見逃しなく!
写真(1) 菊地研(竜神)
写真(2) 青山季可(竜剣の舞)